資金調達
Physicl、フィジカルAIのエッジケース問題に取り組むため1,000万ドルのシード資金を調達

Physiclは2026年11月6日、Inovia Capitalをリード投資家とし、US Venture Partnersも参加したシードラウンドで1,000万ドルを調達したと発表した。また、フィジカルAI向けの合成学習データを生成する初のアプリケーション「Studio」を公開した。
今回の資金は、パリとサンフランシスコ・ベイエリアにいる同社チームの運営と、Studioを支えるプラットフォームに充てられる。InoviaのパートナーであるSteve Woodsは、現実世界の物理法則に根差した、拡張性と品質を備えるフィジカルデータが、モデルの能力を実環境での性能につなげるうえで重要な要素だと述べた。
Physiclが対象としているのは、ロボット、自律システム、世界モデルがデモンストレーションの場を離れても確実に動作できるかを左右する、まれな状況だ。たとえば、バッグに一部が隠れたカップ、カウンターを横切る影、わずかに位置をずらして積まれた箱などがある。こうしたケースを大規模に撮影するのは難しく、いったん記録すると、特定の条件だけを変えて再現することもできない。
Physiclは、フィジカルAIには、言語モデルの基盤となったインターネット上のテキストや、画像モデルを支える数十億枚のキャプション付き写真に匹敵する学習コーパスがないと指摘する。そのため各チームは、導入を妨げる可能性のある失敗に関する事例が不足している。
創業者兼CEOのAlex de Viganは、オブジェクトや部屋を3Dでデジタル化する事業に10年間携わり、大手小売企業向けにライブラリやバリエーション生成ソフトウェアを構築してきた。その後、ロボティクス、世界モデル、コンピュータービジョンの各チームから、モデルが対処できなかった状況を正確にラベル付けしたデータを、数千件単位で提供してほしいという要望が寄せられるようになった。この需要が、Physiclの合成データプラットフォームの基盤となった。
Physiclには、3D、シミュレーション、機械学習の分野に約30人のチームメンバーがおり、ニューヨーク、サンフランシスコ、パリにオフィスを構える。その大半は、de Viganが同社を創業する前の6年間、彼とともに3D制作システムを構築していた。
Studio、制御可能なエッジケースを生成
資金調達の発表と同時に公開された製品発表では、4段階のワークフローが紹介されている。研究者が平易な言葉で失敗事例を説明すると、Studioが一致するシーンとバリエーションを提案する。研究者は各範囲を調整し、カメラの移動経路などの条件を固定する。その後、システムが結果をレンダリングして書き出すとともに、各フレームの生成条件を記録する。
Studioは、実際の3Dジオメトリと既知の素材から構築された1万件の環境と10万点の基礎アセットを収録するライブラリを活用する。照明、時刻、散らかり具合、オブジェクト、素材、カメラの高さ、カメラの移動経路は、それぞれ個別にも、組み合わせても変更できる。これにより、クリップ間で選択した条件だけを変えた、制御可能な比較ができる。
深度、表面法線、インスタンスおよびクラスのセグメンテーション、2次元バウンディングボックスは、レンダリング画像から推測したり、アノテーターが描き込んだりするのではなく、画像の生成に使われたものと同じ3Dシーンから得られる。書き出し形式には、最大1920×1080解像度のRGB画像または動画が含まれ、フレームごとのカメラ姿勢と、照明、レイアウト、オブジェクトを含むシーンのメタデータも出力される。
ベータ版へのアクセスと初期成果
Studioはベータ版として提供され、この期間中は無料で利用できる。視覚モデル、世界モデル、ロボティクスモデルを開発する研究所、大学、企業に、段階的にアクセスが開放される。このアプローチには、現実世界のデータが引き続き欠かせない。Studioは、現実の撮影では繰り返し大量に得られない希少なケースを補うよう設計されている。新しいシーンは毎日追加されており、Physiclは研究ユーザーからのフィードバックを通じて、操作機能、正解データのレイヤー、書き出し形式を発展させる計画だ。
Physiclによると、世界モデル企業のSpAItialはPhysiclのデータで学習した後、実際の部屋を対象とした再構成誤差を半分未満に減らした。この評価は、TUMに所属するMatthias Niessnerのチームが実施した。NiessnerはSpAItialのCEOであり、TUMの教授でもある。また、Physiclのアドバイザーとしても名を連ねている。
Studioのベータ版は、Physiclの前提をより広く検証する機会となる。すなわち、再現可能で正確にラベル付けされた合成エッジケースによって、物理環境での導入に十分な信頼性を備えたモデルを構築できるかどうかだ。












