資金調達
企業向けAIコワーカー開発企業Future Secure AIをSquare Pegが支援

Square Pegは2026年11月6日、Future Secure AIへの出資を発表した。同社の企業向けAIコワーカーは、従業員と連携し、顧客がすでに利用しているシステム内で複雑な業務プロセスを完遂するよう設計されている。
Future Secure AIは、こうしたマルチエージェントシステムを設計、構築、運用する。各コワーカーには名前と顔があり、組織図にも位置づけられる一方、基盤となるエージェントが、情報の受け付け、判断を要する対応、システムの更新、引き継ぎを担う。大規模言語モデルが適切な手段ではない場合には、決定論的なロジックを用い、必要に応じて人間が関与する。
同社は、対象とする領域を「レッドゾーン」AIと呼ぶ。これは、複数のシステムやチームにまたがり、正確性、安全性、監督体制が求められるワークフローを指す。月次決算、税額計算、照合作業、カスタマーサービスなどがその例であり、こうした業務は数十年前から使われている基幹システム内で、厳格なデータ規則のもとに行われることもある。そのため、個々のプロンプトへの応答を速めることではなく、業務プロセス全体を完遂することが、製品に求められる最も重要な要件となる。
導入と提供の基盤となるのは、経営幹部との関係構築と、顧客組織に入り込んで実施する導入支援だ。Future Secure AIは、経営幹部、CEO、取締役会に販売し、まず各社が抱える最大の事業課題に取り組む。その後、経験豊富な元コンサルタントやエンジニアが顧客チームと連携し、コワーカーの適用範囲を定め、構築・運用する。この顧客現場に展開するモデルでは、ソフトウェアを、顧客の実際の業務プロセスに適合させる責任を担うチームと一体化させる。
役割に特化したコワーカー
Future Secure AIによると、同社のAIコワーカーは個別のタスクだけでなく、複雑で大量の処理を伴うワークフローを遂行する。同社は、これらが特定の大規模言語モデルに依存せず、耐障害性が高く、完全な監査に対応すると説明している。それぞれが特定の業務上の役割に合わせて構築され、組織の人員、プロセス、システムに応じて調整される。具体例として、世界的な投資銀行の財務部門で月次決算を分析するAmy AI、同じく世界的な投資銀行で付加給付税を分析するAri AI、医療診断企業のシフト管理を担うLeo AI、世界的な法律事務所の請求業務を支援するBillie AIが挙げられている。
導入とガバナンスの制御
Future Secure AIによると、同社のテクノロジーは特定の大規模言語モデル、クラウドプロバイダー、企業向けプラットフォームに縛られず、顧客がすでに利用している環境に統合できるよう設計されている。導入にあたっては、シングルテナントのプライベートクラウド基盤や、企業ネットワーク内で稼働するコンテナ化アプリケーションを利用できる。この構成では、機密データは環境内にとどまり、公開AIモデルの学習には使用されない。
同社は、システム、承認、意思決定、業務プロセスをまたぐ長期的なワークフローを調整する運用システムについて説明している。その制御機能には、設定可能なガードレール、モニタリング、人間による監督に加え、運用状況の可視化、説明可能性、監査証跡が含まれる。ライフサイクル管理では、導入、モニタリング、サポート、継続的な最適化を扱う。従業員はメール、音声、Slack、Teamsを通じてコワーカーと連携でき、構造化データと非構造化データの両方にも接続してアクセスできる。
創業者とSquare Pegの投資仮説
Future Secure AIの経営陣の紹介ページによると、Mehrdad BaghaiとMichael Hunterが共同創業者兼共同CEOを務めている。Baghaiの経歴紹介では、元McKinseyパートナーで、CEOや取締役会のアドバイザーを務めてきたとされる。一方、Hunterは起業とMacquarie Capitalでの投資銀行業務の経験を持つ。
Square Pegの説明によると、BaghaiはMcKinseyの世界規模のGrowth Practiceを共同で率い、The Alchemy of Growthを共著した。その後、オーストラリアの国立科学機関であるCSIROで成長と事業化を主導した。HunterはMacquarieの投資銀行員として10年以上勤務し、経営幹部と緊密に連携してきた。こうした経歴から、投資家が経営幹部との関係や信頼性を同社の提供モデルの一部と見なす理由がうかがえる。
Square Pegの投資仮説は、企業でのAI導入は製品とサービスの組み合わせによって進み、提供企業は事業課題を特定して導入・提供に責任を持つ必要がある、というものだ。また、経営幹部の信頼と導入実績が重要となる複雑で規制の厳しいワークフローでは、テクノロジーだけで勝者が決まるわけではないとしている。この見方は、同社の出資を創業者の経歴やFuture Secure AIの顧客現場に展開するチームと結びつけるものであり、基盤となるモデルの能力だけにとどまらない。
Future Secure AIにとってSquare Pegの出資は、実行、統合、ガバナンスを軸とする企業向けAIモデルへの支持を意味する。重要なのは、役割に特化したコワーカーと経験豊富な導入チームが、こうした制御を、同社が対象とするレッドゾーンのワークフロー全体にわたる信頼性の高い運用へと結びつけられるかどうかだ。












