資金調達
42AI、行動世界モデルの開発に向けてシード資金6,250万ドルを確保

TechCrunchの報道によると、イスラエルのスタートアップ42AIは2026年11月2日、6,250万ドルのシード資金を調達し、ステルス状態を脱した。同社は、金融ブローカー向けに行動世界モデルを提供している。創業者らはTechCrunchに対し、このシステムは状況の変化に応じて、個々の顧客がどのように行動するかの確率を推定すると語った。
最高経営責任者(CEO)兼共同創業者のAmit Gal-OrはTechCrunchに対し、資金は3年間にわたり創業者らとInfinity Groupから調達したもので、全額を外部投資家から集めたわけではないと語った。Infinityは父親のAmir Gal-Orが創業した。同氏は42AIの会長でもあり、共同創業者の一人でもある。Ehud Ezraは最高技術責任者(CTO)兼共同創業者だ。
Gal-Orによると、42AIは大手ブローカー10社と連携し、さらに顧客の受け入れを進めており、売上高は7桁を超える。ただし、正確な金額は明らかにしなかった。顧客は定額料金、またはプラットフォームの支援によって得られた価値の一定割合を支払う。Gal-Orは、あるブローカーがダイナミック・ヘッジングによって約3,000万ドルの付加価値を生み出したと述べた。
行動モデルの仕組み
Gal-OrとEzraはTechCrunchに対し、人間の行動は決定論的ではなく、確率的なものだと語った。42AIは過去の行動を単純に外挿するのではなく、その根底にある動機の特定を試み、状況ごとに起こり得る意思決定に確率を割り当てるという。
ブローカーの顧客について、Ezraによると、入力データには顧客確認(KYC)やオンボーディングの過程、サポートや営業でのやり取り、資金移動、取引などが含まれる場合がある。分析対象となるシグナルには、感情、声、通話頻度、購入や売却のタイミング、同時期の市場状況が含まれる。
TechCrunchの報道によると、こうした観察結果は特性を数学的に表現したデータへと変換され、トランスフォーマーベースの世界モデルに入力される。予測の説明は、別の言語モデルが生成する。Ezraによると、学習時の報酬は、シミュレーション中も根本的な傾向が保たれるよう設計されている。たとえば、普段はリスクを避ける人が、突然リスクを取る人物としてモデル化されることはない。
学習データと公表された結果
Gal-Orによると、42AIはこの手法の開発に3年を費やし、心理学の研究に神経科学と遺伝学を組み合わせた。また、心理学や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の専門家、化学者のDan Shechtmanから助言を受けた。チームは当初、心理評価や行動シナリオを用いて数千人を調査し、その後、200万人を超える人々を対象とする政府やバイオバンクのデータセットを追加した。さらに、顧客のデータセットはその後拡大し、対象者は約3,000万人に達したという。
TechCrunchは、市場取引の予測について、42AIが正確性98%と公表したと報じた。Gal-Orは、この数値が示すのは個々の取引を正しく予測できたかどうかではなく、取引フローが予測範囲内に収まったかどうかだと説明した。また、取引の方向と出来高について、F1スコアは0.8~0.85だったと述べた。F1スコアは、分類モデルが正しい予測と誤警報、見逃しの間でどのようにバランスを取るかを測る指標だ。
創業者らは、人が経験するすべての情報にシステムがアクセスできるわけではないため、予測精度には上限があると認めた。Ezraによると、取引の判断を変える友人や同僚からの助言など、重要な状況の文脈が欠けている場合にも、精度は低下する。
Ben Yellin、Ezra、Mark Foreman、Shula Grinapolによる2026年2月19日にarXivへ投稿されたプレプリントでは、構造化された高次元の心理測定的特性プロファイルから、個人の戦略的選択を予測するよう微調整された大規模行動モデルが紹介された。著者らは、安定した性向、動機づけの状態、状況上の制約と、実際に観察された選択を結び付けた独自データセットで学習させたと説明している。
著者らは、学習に使っていないシナリオでの評価において、行動予測の精度が、適応させていないLlama-3.1-8B-Instructを基盤とするモデルを上回り、Big Five特性を条件として与えた場合には、最先端のベースラインと同等の性能を示したと報告した。また、同モデルは特性プロファイルがより詳細になるほど性能が向上し続けた一方、プロンプトベースのベースラインには複雑さの上限が見られたという。
ブローカー向けの用途と公表された制約
42AIのウェブサイトで同社は、生データを行動要因に変換し、特定の出来事に対する反応や時間の経過に伴う行動を予測し、変数の変化をシミュレーションして、説明を提示する行動分析基盤を紹介している。応答時間は、世界モデルが1~10ミリ秒、大規模行動モデルが2~12ミリ秒とされている。
ブローカー向けには、顧客ごとの取引を、銘柄、方向、出来高別に最大24時間先まで予測できると、同社のウェブサイトは説明している。また、エクスポージャーの事前把握、ダイナミック・ヘッジング、テールリスク管理、スリッページとバリュー・アット・リスクの低減を、ブローカー向けの用途として挙げている。Gal-OrはTechCrunchに対し、顧客はこのシステムを流動性、証拠金要件、ヘッジのエクスポージャーの管理に使っていると語った。
Gal-Orによると、導入されているシステムは個人を特定できる情報を必要とせず、モデルがその人物の身元を知ることもない。一方、TechCrunchの報道によると、42AIは顧客の活動を関連付けて個人ごとの行動プロファイルを作成している。
TechCrunchが、顧客が自社の顧客に関する予測を悪用する可能性を指摘したところ、Ezraはそれを正当な懸念だと述べた。創業者らは規制や監視、社内倫理委員会を挙げ、Gal-Orはこの技術がそうしたリスクへの対処に役立つ可能性があると述べた。一方、TechCrunchによると、創業者らは顧客が予測を利用し、プロファイリングの対象となる人々に対して優位に立つことを防ぐ具体的な仕組みについては説明しなかった。
創業者らはTechCrunchに対し、42AIはゲーム、不正防止、サイバーセキュリティの分野を検討しており、将来的にはロボットやAIエージェントがモデルを使って人々を理解できるようにしたいと語った。Ezraは、新たな分野ごとに、その分野のルールと背景をモデルに学習させる必要があると述べた。Gal-Orはまた、同社が追加の資金調達を計画していると明らかにした。
文書で確認できる証券仲介業務への導入実績を超えて事業を拡大するには、Ezraが説明した分野ごとの学習が必要となる。一方、42AIは追加の資金調達を計画している。












