書評
書評:Rob May著『AIへの投資:モートと落とし穴を見分ける6つのメンタルモデル』
Rob Mayと、持続的なAI事業の構築に取り組む投資家や起業家に向けた、実践的な思考モデルを紹介する個人的な書評。

『AIへの投資:モートと落とし穴を見分ける6つのメンタルモデル』を読むのを楽しみにしていた。主な理由は、Rob Mayの「AIへの投資」ニュースレターを通じて、何年も彼の活動を追ってきたことにある。私の考えでは、Rob Mayが多くの投資家と一線を画すのは、集団思考を避け、第一原理から考える姿勢だ。世間の主流の見方にとらわれず、事業が実際にどう成り立っているのか、優位性はどこから生まれるのか、そして次の技術的変化を経てもその優位性は保たれるのかを問う。
この本の真価が発揮されるのは、まさにこの点だ。AI投資にこのようなアプローチを取る本に、私はこれまで出会ったことがない。魅力的な技術や成長市場を見つけるだけではなく、その周辺で築かれる事業をどう分析するか、読者に根本から見直すよう促している。機会は計り知れないほど大きいが、有望なAIの能力を見極めることと、投資に値する企業を見極めることは、まったく異なるスキルだ。
AIをめぐる期待が現実に直面するとき
Rob Mayは、AI業界を追ってきた人なら誰もが知っているような事例を通じて議論を展開する。Jasperはメディアの寵児となり、評価額15億ドルで1億2,500万ドルを調達した。その後、ChatGPTが高性能なテキスト生成を消費者に直接提供し、同様の基盤技術を利用できることを売りにした製品の価値を脅かした。Rob Mayは、この逆転劇を用いて、一見確かな優位性がいかに急速に揺らぎ得るかを考察する。
この事例で私が興味を引かれるのは、投資家や創業者が向き合わざるを得ない問いだ。基盤技術が広く利用できるようになったとき、顧客は依然としてあなたの会社に何を求めるのか。防御可能なモートを持つ企業と、単にAIを表面的に組み込んだだけの企業とを分けるものは何か。先行すれば時間を稼げるが、それだけではこの問いへの答えにはならない。モデルへのアクセスがコモディティ化すると、ワークフローの掌握、流通、専門知識、顧客との関係がいっそう重要になる。
DeepSeekは、そうした不確実性のもう一つの側面を示している。本書では、GPT-4クラスのモデルが訓練コストは557万6,000ドルだったと報告されていることが、大きな衝撃をもたらしたと論じている。投資上の教訓は重大だ。競争に必要なコストについての前提は、バリュエーションモデルが想定するよりもはるかに速く変わり得る。
SaaSの従来型戦略を見直すべき理由
Rob Mayは過去のAIの冬の時代を振り返り、今日の幅広い導入によって、有望なデモの後に広範な失望が続くという従来のパターンは崩れたと論じる。有用なAIは今やあまりにも多くの実際のワークフローに組み込まれており、単に研究室へ引き返すことはない、というのが彼の主張だ。それでも、導入が続いているからといって、その波に乗って成長する次のユニコーン企業を見つけるのが容易になるわけではない。
彼は、この変化を説明する四つの根本的な違いを挙げる。AIは認知的な作業をこなし、データから学習し、利用者の期待を変え、AIとともに育つ世代にとって生活に欠かせないものになり得る。三つ目の点、すなわち再帰性は特に興味深い。顧客はいったんある機能を体験すると、ほかの場所でも同じ機能を期待するようになる。技術が普及するにつれて、企業がサービスを提供する市場そのものが変化する。
最大のゲームチェンジャーは、拡大の速さだ。AI企業は、かつては例外的な外れ値に限られていたような期間で大きな規模に達することができる。しかし、評価には依然としてビジネスモデルへの理解が欠かせない。タスク単位または成果単位で課金する場合、ソフトウェアの利用枠を一定数販売する場合とは、価値、収益、コストの関係が異なる。
SaaSで培われた教訓の中には、今も大いに当てはまるものがある。業界知識は依然として重要だ。業界固有の実際の課題を理解する垂直特化型ツールは、大きな優位性を築ける。独自データのループは積み重なるほど強化され、深い連携は乗り換えコストを生み出す可能性がある。課題は、こうした持続的な強みと、顧客がほかの数十社からも得られる機能とを見分けることだ。
問いの質を高める6つのメンタルモデル
本書は、中心的な主張を次の6つのメンタルモデルに沿って構成している。AIを複数の技術の集合体として理解すること、従来のSaaSに関する前提を問い直すこと、市場の大規模な混乱を想定すること、市場と企業戦略の変化を認識すること、より速い規模拡大を理解すること、そしてAIの売上原価を慎重に評価することだ。
これらのモデルがうまく機能するのは、それぞれが表面的な投資仮説に潜む別々の弱点を明らかにするからだ。ある企業を「AI企業」と呼んでも、その経済性についてはほとんど分からない。売上が劇的に伸びても、持続性についてはほとんど分からない。今日の粗利益率が高くても、顧客がより難しい仕事を製品に求め始めたときに何が起きるかは分からない。
私が最も価値を感じるのは、もう一つ問いを重ねる習慣だ。技術が機能するかを問うた後は、顧客の実際のワークフローで十分な信頼性をもって機能するかを問う。顧客が対価を払っているかを問うた後は、何に対して支払っているのか、そしてその支出が続きそうかを問う。こうした姿勢により、本書は事例が書かれた時点を超えて役立つものになっている。
Botkeeperとコストの推移が重要な理由
特に参考になる事例の一つが、Rob Mayが投資した簿記自動化企業のBotkeeperです。Rob Mayによると、当初の同社は人間の会計士に大きく依存しており、粗利益率はおよそ20〜25%でした。従来型のソフトウェア企業並みの利益率を期待する投資家には、魅力的に映らない数字でした。しかし、会計士たちの作業によって、プロセスの自動化に役立つデータも生み出されていました。Rob Mayは、その後、より多くの作業がソフトウェアに移行するにつれて、粗利益率が70%を超えたと報告しています。
ここから私が得た教訓は、人間の関与によって何が構築されているのかを見極めることです。完了した作業の一つひとつが、システムによる次の作業の効率化につながるなら、初期のサービス提供コストは、より拡張性の高い事業を築くための投資になっている可能性があります。一方、新しい顧客が増えるたびに、それに比例して手作業も際限なく増えるのであれば、経済性はまったく異なるものになります。
Rob Mayは、これとは逆の傾向、つまり利用が増えるほど負担が大きくなる推論コストについても考察しています。AIシステムがより難しいタスクを完了するには、より多くの計算処理や、繰り返しの試行、人間による確認が必要になることがあります。小規模な試験導入では魅力的に見える製品でも、顧客が複雑な業務を任せるようになると、高コストになる可能性があります。だからこそ、現在の利益率と同じくらい、コストがどの方向に向かっているかが重要なのです。
効率性が自動的に競争優位につながるわけではない
私が有用だと感じたもう一つの枠組みは、Rob Mayが示すAIの価値の三分類です。すなわち、コモディティ化したAI、中核となるAI、そして事業拡大につながるAIです。大まかに言えば、競合他社が容易に導入できる機能、企業の既存の優位性を強化する機能、そして新たな事業機会を切り開く機能を指します。
最初の分類は、彼が示す架空の航空会社の例で分かりやすくなります。ある航空会社がAIサポートエージェントを導入し、業務効率を高めます。すると、競合他社も同様のツールを採用します。一時は差別化要因に見えたものが業界の当たり前になり、経済的なメリットの一部は競争によって失われる可能性があります。
これは、AIに関する発表のすべてを、事業の強化を示す証拠と見なしてしまうことへの有効な歯止めになります。競合他社が同等のツールを利用できるようになった後も、何が独自の強みとして残るのかを知りたいのです。独自のフィードバック、深い業務知識、あるいは模倣が難しい顧客の業務フローとAIを組み合わせる企業のほうが、誰もが購入できる同じ自動化技術を導入すると発表するだけの企業よりも、説得力のある答えを示せます。
AIを実務に生かせる経営者に注目する
本書には実践的な考察が数多く盛り込まれており、AIを実際に組織へ取り入れられる経営者を支援することの重要性もその一つです。業務フローや責任分担をどう変えるのかについて具体的な計画を示すほうが、組織全体にAIを導入すると約束するプレゼンテーションより、はるかに説得力があります。
売上の質に関するRob Mayの考察も、この点を裏付けています。有償の試験導入や概念実証によって初期に目を引く数字を上げることはできますが、継続的な本番業務に結び付いた売上とは分けて考えるべきです。顧客が明日、実験的な取り組みをやめたとしたら、事業のどれほどが残るのか。それが考えるべき問いです。
これは、特に創業者にとって価値のある考え方だと思います。試験導入を獲得するのは前進ですが、顧客の業務の一部として定着する製品を築くことは、また別の成果です。この違いを早い段階で理解すれば、製品開発の優先順位や採用、さらには成功の測り方にも反映できます。
最終評価
私が最も強く感じたのは、本書は投資家だけが読むべきものではないということです。起業家にとっても、AI企業が投資に値すると判断される理由、持続的な優位性が生まれる仕組み、そして高くつく前に避けられるスタートアップの落とし穴を理解することには、大きな価値があります。
本書は、購入すべき銘柄のリストではなく、判断力を養うための枠組みとして読むのが最適です。最大の貢献は、読者がある事業を信頼する理由を、より正確に捉えられるようにしてくれることです。業界の進展とともに、事例は必然的に古くなっていくでしょう。それでも、前提を問い直す姿勢こそが、本書に長く役立つ価値をもたらします。
『AI投資:競争優位と落とし穴を見分ける6つの思考モデル』は、そもそも私がRob Mayのニュースレターを読むようになったきっかけである、第一原理に基づく思考を提示しています。守りの堅い事業と魅力的な物語を見分けようとする投資家にも、前者を築こうとする起業家にも、思慮深く読む価値のある一冊です。












