パートナーシップ
Salesforce、HMRCの英国税務サービス近代化に向けた15年契約を獲得

Salesforceは2026年10月15日、英国歳入関税庁(HM Revenue & Customs)と、英国の税務サービスを近代化するための15年間の戦略的契約を締結したと発表した。契約額は最大20億ポンドで、同社は税務当局の戦略的なEnterprise Customer Relationship Management(ECRM)プロバイダーとなる。
発表によると、英国の税制は3,400万人を超える市民と500万の企業を支えている。一方、従来型システムや分断された問い合わせ窓口によって、納税者に円滑で効率的なサービスを提供することが妨げられてきたという。
契約条件と調達記録
HMRCの契約詳細通知は、2026年10月15日午前10時に、2023年調達法に基づいて公開され、供給業者としてSalesforce UK Limitedを記載している。契約額は付加価値税を除き20億ポンド、含めると24億ポンドとされている。契約は2026年9月30日に締結され、2036年9月29日まで有効で、任意の延長が2回(最長でまず3年間、その後さらに最長2年間)可能となっており、延長された場合は2041年9月29日までとなる。通知では契約期間の合計を15年とし、調達の主なカテゴリーをサービスに分類している。また、ソフトウェアパッケージおよび情報システム、ならびにコンサルティング、ソフトウェア開発、インターネット、サポートにわたるITサービスの分類も記載されている。
調達には競争的柔軟手続きが用いられ、HMRCは署名済みのモデルサービス契約書を一部非公開にしたうえで、通知とともに公開した。通知には、利益相反の評価が作成されたことも記録されている。契約に盛り込まれた主要業績評価指標では、供給業者のプラットフォームサービスとData Cloudサービスについて、それぞれ月次の稼働率報告を求めている。また、ページ応答時間の四半期報告と、供給業者の持続可能性への取り組みを対象とする社会的価値に関する年次報告も求めている。通知によると、Baringa Partners LLPは調達の実施にあたりHMRCの商務機能を支援し、TLT LLPは契約について助言する外部法律顧問を務めた。
英国政府のFind a Tenderサービスに掲載された調達記録では、要件を、関連する専門サービスを伴うソフトウェアプラットフォームと説明している。これは、HMRCのEnterprise Customer Relationship Managementプログラムの一部を構成する、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)型CRMプラットフォームである。
中核機能は、供給業者が所有または開発したソフトウェアを用いる自社提供方式で提供する必要があり、マーケティングおよびキャンペーン管理、顧客管理、ケース管理、インタラクション・チャネル・メッセージング管理、AI、インサイト、レポート作成およびインテリジェンス、ポータルとアプリを通じた顧客体験を含む。追加機能は、自社または第三者による提供が可能で、本人確認、検証および認証、安全なデジタル交換通信、不正対策、データおよび統合管理、運用管理、ナレッジ管理、コンプライアンス違反管理に及ぶ。また、供給業者には、導入を支援する専門サービスを一定程度提供することも期待されており、HMRCは必要に応じてそのサービスを利用できる。
調達記録によると、2025年8月18日に計画通知が公開され、続いて2026年5月27日に入札通知、2026年9月8日に契約落札通知、2026年10月15日に契約詳細通知が公開された。
プラットフォーム構成とケースワーカー向けAI
Salesforceによると、HMRCの従来型システムを単一の安全なプラットフォームに集約し、納税者とのやり取りを360度把握できるようにすることで、最初の問い合わせ時に解決できる案件を増やすことを目指す。同システムは、同社のAIエージェントプラットフォームであるAgentforceをPublic Sector SolutionsおよびMarketing Cloudと組み合わせ、Data 360プラットフォームを基盤とする。これにより、HMRCはすべての問い合わせ窓口を通じた各顧客とのやり取りを一元的に記録できるようになるという。
Salesforceによると、HMRCはAgentforceを活用し、定型的な事務作業を自動化して受信した問い合わせを振り分け、複雑な案件を適切な専門家へ回すことで、ケースワーカーを支援する。AIは厳格なガバナンスのもとにあるワークフロー内で稼働し、納税者に関するすべての判断は、訓練を受けたHMRC職員が引き続き監督するという。同社はさらに、このプラットフォームが暗号化と役割ベースのアクセス制御を組み込んだ厳格な英国のデータ保護基準を満たしていると説明した。また、これらの機能は、追加の支援を必要とする人々へのサポートを維持しながら、2030年までにデジタルサービスの提供率を90%にするというHMRCの目標を支えるとしている。
Quantexa、中小企業への発注と英国投資
Salesforceによると、英国の意思決定インテリジェンス企業Quantexaが導入に協力し、複雑なデータを自動的に結び付け、不正のパターンを特定するツールを提供する。このツールにより、ケースワーカーはリアルタイムのリスクスコアを確認し、隠れた不正ネットワークを示す兆候を把握できるため、未回収の歳入を回収し、税収不足を縮小するHMRCの取り組みを支援できる。またSalesforceは、このプログラムにおける専門アドバイザリーサービス業務の15%を、英国の中小企業に割り当てることを約束している。
同社は、英国でのより広範な取り組みとして、2023年から2028年までの5年間にわたる60億ドルの投資や、Salesforce Venturesによる英国のAI企業への2億ドル超の投資を挙げた。Salesforceはまた、学校、雇用支援機関、顧客やパートナーのエコシステムと連携し、AIとデジタルスキルを学ぶ機会の拡大に取り組むと述べた。これには、若者、神経多様性のある人々、十分に代表されていないグループを対象とする見習い制度も含まれる。こうした取り組みは、2030年までに1,000万人の労働者にAIの研修を行うという英国政府との約束を支えるものだ。
経営幹部のコメント
MissionforceおよびGovernment CloudのCEO、Kendall Collins氏は、世界各国の政府が市民を最優先するAI主導の変革期に入っていると述べた。また、HMRCは、イノベーションと人々への配慮、信頼を重視する姿勢を組み合わせれば何が可能になるかを示す、世界をリードする組織だと評した。SalesforceはMissionforceを通じてHMRCと連携しているという。
Salesforce UK & Irelandの社長兼CEO、Zahra Bahrololoumi氏は、この合意はテクノロジーの枠を超えて価値をもたらし、政府のデジタルスキル推進策を支援すると述べた。また、テクノロジー分野でのキャリアへの道を開き、より包摂的で高いスキルを備えたデジタル人材の育成にも貢献するとした。












