AIモデルとプラットフォーム
Inception、主力の拡散型LLM「Mercury 3」を発表

Inceptionは2026年10月19日、Mercury 3を発表し、これまでにリリースされた拡散ベースの大規模言語モデルの中で最も高性能なモデルと説明した。リリース時の価格は、入力トークン100万個あたり0.10ドル、出力トークン100万個あたり0.35ドル。
同社によると、Mercury 3はさまざまなベンチマークでGPT-6 LunaやClaude Haiku 5.5を上回り、毎秒1,000トークンを超える速度で動作し、その速さは4~8倍に達する。発表では、NVIDIA GPUで毎秒1,068トークンの速度を実現し、コンテキストウィンドウは100万トークンに拡大したとしている。Mercury 2.5のコンテキストウィンドウは26万トークンだった。通常価格は入力トークン100万個あたり0.20ドル、出力トークン100万個あたり0.70ドルで、リリース時には50%割引が適用される。キャッシュ済み入力トークンは入力料金から90%割引となり、通常価格は100万トークンあたり0.02ドル、キャンペーン価格は0.01ドル。
テキスト拡散モデルのスケーリングに関する主張
Inceptionは今回のリリースを、テキスト拡散モデルがスケールすることを示す証拠と位置づけた。同社によると、Mercury 3の総パラメーター数はMercury 1の40倍を超える一方、さまざまな標準ベンチマークで測定した知能はMercury 1 (mini)からMercury 3にかけて3倍に向上した。InceptionはMercury 1を、拡散型LLMを商用アプリケーション向けに構築できることを初めて示したモデルと説明し、AIコミュニティでは、複雑なユースケースにおいて拡散型LLMが自己回帰型モデルと競えるほどスケールするのかが未解決の問題だったと述べた。同社は、Mercury 3がその問いに答えるものであり、自己回帰型モデルの進歩を後押ししたスケーリング則は拡散モデルにも当てはまるとしている。
早期アクセス段階での本番環境の実績
Inceptionによると、早期アクセスパートナーはすでに、ブラウザー操作エージェント、インタラクティブ教育、リアルタイム検索エージェント、カスタマーサポートなど、低遅延が求められる用途でMercury 3を稼働させている。同社は本番環境用のWebエージェント・ハーネスでMercury 3を実行し、最先端モデルとともに、実際のMind2Webナビゲーションタスク50件で評価した。その結果、Mercury 3はタスクの50%を完了した。同社はこの完了数がGPT-6.1-Solを大幅に上回ると説明しており、トークン数とエージェントのステップ数を同じにしたうえで、トークンあたりのコストを大幅に抑えて達成したという。発表では、ブラウザー操作に関するセクションで、TinyFish AIの共同創業者であるShuhao Zhangのコメントも紹介されている。
General Learning(RevisionDojoとして知られる)の共同創業者兼CTO、Michael Tongは、Mercury 3によって、同社の個別指導サービスでは「推論力を損なうことなく」すべての生徒に即時のフィードバックを提供できるようになったと述べた。ヒント、採点済みの回答、定義が約1秒で返され、その品質は、同社が以前使用していたモデルと同等か、それを上回ると説明した。また、既存の技術スタックをそのまま置き換えられるモデルだと語った。
Octen AIの創業者兼CEO、Kuan Zouは、スマートグラスでは「回答に5秒もかかると、うまく動いていないように感じる」と述べた。同氏によると、OctenのSense APIでのテストでは、Mercury 3の生成時間の中央値は0.9秒、応答全体にかかる時間の中央値は2.2秒だった。これは、同社がテストした高速モデルの中で、速度と品質のバランスが最も優れていると説明している。
複雑な規制業界向けに音声、チャット、メールを通じた顧客対応エージェントを構築するLorikeetで技術スタッフを務めるMichael Gribbenは、初期テストでMercury 3はレイテンシにおいて他のモデルを上回り、評価テストと本番環境の両方でもより高い性能を示したと述べた。
Mercury製品群の全容
Mercury 3は、InceptionがリアルタイムAI向けに構築したと説明する製品群の主力モデルだ。Mercury Voiceは音声アプリケーションに求められる低レイテンシに合わせて最適化されており、最初の回答トークンが返るまでの時間を短縮することに重点を置いている。Inceptionによると、すでにAudivi AI、Altur、OpenCallのエージェントを支えている。同社のモデル一覧ページでは、Mercury Voiceの初回トークンまでの時間は170ミリ秒未満とされ、価格は入力トークン100万個あたり0.40ドル、出力トークン100万個あたり1.50ドル。キャンペーン価格として、それぞれ0.20ドルと0.75ドルも表示されている。
Mercury Decideは、大量の分類処理向けに構築された意思決定モデルだ。確率を適切に調整した回答を返し、判断に確信が持てないケースは人間のレビュアーに引き継げる。Inceptionによると、Mercury DecideはJevBenchやLegalBenchを含むベンチマークでJevを上回る。同社のモデル一覧ページでは、入力トークン100万個あたり0.04ドルとされ、表示中のキャンペーンでは0.02ドルに割引されている。出力トークンは0ドルと記載されている。
Inceptionのブログ一覧によると、Mercury Voiceは2026年9月29日に発表された。また、2026年10月15日の投稿では、Mercury 2がTIMEの「2026年の最も優れた発明」に選ばれたことが発表された。
APIへのアクセスとMercury 2の提供終了
Mercury 3はInception API Platformのほか、OpenRouter、Baseten、Vercelを通じて利用でき、OpenAI APIと互換性がある。同社のクイックスタートドキュメントでは、モデルは mercury-3 api.inceptionlabs.ai/v1のチャット補完エンドポイントから提供されると説明されている。リクエストパラメーターにはreasoning_effortやtemperatureが含まれ、さらに inceptionai PythonおよびTypeScript用のSDKも提供されている。ドキュメントでは、AISuite、LiteLLM、LangChain、OpenAIクライアント、Vercel AI SDKを介してAPIを利用する方法も紹介されている。新規のプラットフォームアカウントには、支払い情報を登録しなくても1億トークンが無料で付与される。
企業向けの導入では、Inceptionは専用キャパシティ、自動スケーリング、コンプライアンス管理機能、設定可能なデータ保持期間を提供するとしている。また、企業顧客と連携し、各社のワークロードへの適合性や評価設計、サービス提供上の制約を踏まえたパフォーマンスについて検討すると述べた。
モデルのページには、Mercury 2とMercury 2.5は新規ユーザー向けの提供を終了したと記載されている。2026年10月19日より前に利用実績のある既存顧客は、2026年11月15日まで引き続き利用できる。企業顧客については、既存の契約に基づくサポートが継続される。












