AIモデルとプラットフォーム
MacPaw、行動前に確認を求めるデバイス上のアシスタント「Eney」を発表

MacPawは2026年10月15日、MacとiPhone向けの先回り型AIアシスタントEneyを発表した。同社によると、Eneyはユーザーのアプリやファイル、システム全体で何が起きているかを把握し、次のステップを準備したうえで、実行前に確認を求める。
ボストン発の発表では、EneyはブラウザーではなくMac上で動作するように作られていると説明されている。ユーザーが使うアプリからディスク上のファイル、カレンダーに登録された会議まで、Mac自体の状況を読み取るという。MacPawによると、Eneyは注意が必要な事柄――まもなく始まる通話、要約が必要な会議、空き容量が不足しつつあるディスクなど――に気づき、次のステップを準備して、承認を得るためにユーザーに提示する。
MacPawは今回の発表を、自律的に動くAIエージェントが台頭した年を背景に位置づけ、利用拡大の障壁は普及ではなく信頼だと主張した。同社が2026年7月と8月に米国のMacユーザーを対象に実施した独自調査では、過去3カ月間にAIツールを使ったことがある人は81%だった一方、仕事の進め方にAIが組み込まれていると答えた人は39%だった。MacPawによると、Eneyはこの隔たりを埋めるために作られている。先回りして動く一方、自律的に行動することは決してなく、初期設定ではメッセージの送信、予定の変更、ファイルの移動を行う前に確認を求める。どこまで自動で実行させるかは、ユーザーが決められる。
創業者兼CEOのOleksandr Kosovanは発表の中で、MacPawは2008年からMacの管理を支援するツールを開発してきたと述べ、Eneyをその次のステップと位置づけた。チャットボットではなく、MacとiPhone上で動作し、保留中の事柄に気づいて次のステップを準備し、何かを送信または変更する前に確認を求める、慎重な同僚のような存在だという。
Eneyの仕組み
EneyはブラウザーのタブではなくMac上で動作するため、返信文を作成するアシスタントが、ディスクの容量を圧迫しているものを知らせることもできる。MacPawによると、Eneyはカレンダーに登録された会議が近づいていることを認識し、開始前にユーザーへ通知できる。通話が始まると、会話の文字起こしを提案し、その後、会議メモやアクション項目、フォローアップの招待状を作成して承認を求めることもできる。EneyはApple Mail、Calendar、Remindersに標準対応し、Gmail、Google Calendar、Google Drive、Slack、Notion、Jira、Linearにも接続できる。新たなコネクターも定期的に追加される。
「Eney Wand」と呼ばれる機能は、Option-Wを押して画面上の任意の範囲をドラッグすると起動する。MacPawによると、スクリーンショットを保存したりアプリを切り替えたりせずに、テキストをその場で翻訳する、価格を換算する、日付をカレンダーの予定にする、画像からテキストをコピーする、共有すべきでない内容にぼかしを入れるといった操作ができる。
あらかじめ用意されたワークフローには、「朝のブリーフィング」「今日の計画」「週次レビュー」があり、技術的な設定をしなくても、必要に応じて、またはスケジュールに沿って実行できる。Eneyはディスクの空き容量不足やメモリーへの負荷、頻繁にクラッシュするアプリについて警告し、対処法を提案するほか、「ダウンロード」フォルダーを整理し、ファイルを検索する。ユーザーが確認するまで、何かが移動されることはない。Eney SpellはMail、Slack、Notes、ブラウザー内のスペルや文法、表現をチェックする。また、Optionキーを2回押すと、どこからでもEneyを呼び出し、テキスト入力または音声入力ができる。アシスタントは英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ポーランド語、ブラジルポルトガル語、ウクライナ語の8言語に対応する。
Eneyの公式サイトにはさらに、文書の作成・編集、PDFの分割、ファイル形式の変換といったファイルや文書に関するタスクに加え、画像の生成・編集、動画のトリミング、QRコードの作成など、メディア関連のタスクも掲載されている。
記憶レイヤー「Mnemos」
MacPawによると、Eneyは同社独自のAIスタックを基盤とする初の製品で、その中核をMnemos記憶レイヤーが担う。同社によれば、Eneyはユーザーにとって重要な情報を記憶し、訂正されたり古くなったりした事実を更新する。また、回答が記憶に基づいている場合はそのことを示す。一方、Mnemosが管理するのはEney自身の記憶だけであり、ユーザーのファイルや他のアプリを読み取ったり変更したりすることはない。
MacPawのMnemosに関するドキュメントでは、書き込み経路にモデルを介さずイベントを即座に取り込み、人や事実、関係性、時間をバックグラウンドでナレッジグラフに結び付け、時間を考慮して記憶を検索し、検証可能な記録を残しながら記憶を薄れさせたり、統合したり、削除したりするパイプラインについて説明している。また、Mnemosは次の3種類の知識を分けて保持するとしている。「Told」は、設定として保存される好み、訂正、固定した記憶を指す。「Written」は、ファイル、チャット、メモ、メールから見つかった事実を指し、それぞれ情報源と結び付けられる。「Observed」は、推論によるものと明示されたパターンを指し、ユーザーはそれを訂正または上書きできる。
プライバシーについて、ドキュメントには、Mnemosは初期設定でローカル動作し、クラウドへの接続は目的ごとに選択して利用できること、機密性の高い項目は項目ごとに暗号化された保管庫に保存でき、Touch IDも任意で利用できること、機密データはどのモデルに届く前にもマスキングされること、明示的に求められない限りデバイス識別子は検索結果に表示されないことが記されている。
MacPawによると、Mnemosは500問で構成されるLongMemEval-Sベンチマークで正解率89.0%を記録し、2026年9月に社内で実施した参照テストでは、単一セッションの再現率が100%だった。このテストでは、mem0のセルフホスト型オープンソースSDK、ZepのGraphitiエンジン、MemOSを対象に、同一の会話、GPT-5が作成した回答、1つのGemini判定モデルを使用した。同ページでは、異なるテスト環境、設定、判定モデルを使ってベンダーが公表したスコアは、同社の統制された条件での数値と直接比較できないと注意を促している。
ドキュメントによると、Mnemosは、MacPawとLiquid AIが共同で研究・開発し、Appleシリコン向けに調整したLiquid Foundation Models上で動作します。また、アプリやデバイス間でAIのメモリを移行するための、オープンソースでベンダーに依存しない形式「Portable Memory」についても説明されています。この形式にはSwiftによる実装が用意されています。Mnemosは現在開発中で、デモはリクエストに応じて利用できます。
料金と提供状況
Eneyは現在、Mac向けにeney.aiで、iPhone向けにApp Storeで提供されており、最初の14日間は10,000 AIクレジット付きで無料で試せます。Setappのメンバーシップに加入していなくても、Setappアカウントでサインインできます。Mac版の動作にはmacOS 15以降が必要で、Setapp AIクレジットを使用します。クレジットは「設定」の「使用状況」で確認できます。公式サイトでは、ハードウェア要件としてMシリーズのMacが挙げられています。
トライアル終了後の公式料金は、Starterが月額14.99ドルで10,000クレジット、Boostが月額29.99ドルで20,000クレジット、Powerが月額49.99ドルで30,000クレジットです。解約しない限り、サブスクリプションは毎月自動更新されます。いつでも解約でき、未使用のクレジットは翌月に繰り越されません。EneyのFAQによると、アシスタントがアプリやファイルにアクセスするのはユーザーが許可した場合に限られます。また、すべてのAIリクエストはSetappの組み込みAIサービスを通じて処理され、ユーザーのクレジット残高から差し引かれます。簡単なタスクでは消費量が少なく、規模の大きなタスクではより多くのクレジットを使用します。












