ソートリーダー
AI導入は進んでいる。では、業績は向上しているのか?

企業は、AIへの投資を意味のある成果につなげることに苦戦しています。利用は広がっていますが、AIから大きな変革的価値を得ていると回答した組織は、わずか13%です。このギャップを前に、リーダーは立ち止まり、自分たちが測定しているのは活動なのか、それとも意味のある変化なのかを問い直す必要があります。
AIの投資対効果を明確に示すよう求められる中、組織はツールの利用状況、アクティブユーザー数、導入率など、報告しやすい指標に頼りがちです。こうした指標からは、従業員がAIを利用しているかどうかが分かります。しかし、業務が改善しているのか、投資が価値を生み出しているのかについては、ほとんど分かりません。
たとえばPwCの調査では、調査対象となった従業員の64%が過去12か月間に職場でAIを利用しており、前年比で10ポイント増加しました。一見すると成長を示す明るい兆しですが、最終的な業績への影響が明らかになったわけではありません。リーダーがAIの導入を変革の証拠として扱うと、それは見せかけの指標になります。より重要なのは、AIによって過去のプロジェクトから得た知見をフレームワーク、ツール、アクセラレーターへと発展させ、チームが成果を上げる方法を改善できているかどうかです。
見えにくい問題:AIは、変える必要のある業務まで加速させる
AIを導入する前に、組織はワークフローの目的を理解し、不要な手順を特定したうえで、業務の進め方を見直す必要があります。これは、AIを導入すると非効率なプロセスまで加速し、ボトルネックを後工程へ移したり、確認や手戻りを増やしたりする可能性があるためです。
何を測定するかを決める際にも、同じ理解が指針となります。ワークフロー全体を見渡すことで、ある作業の変更が後続のすべての工程にどう影響するか、また、見かけ上の効率化によって実際に労力が減っているのか、それとも誰かに移っているだけなのかを、チームは把握できます。
AIは、コンテンツの下書き、情報の要約、データの迅速な分析など、個々の作業を加速できますが、プロセス全体が改善するとは限りません。たとえば、コンテンツをより速く作成できるようになると、その後の確認担当者や承認者の作業が増えることがあります。個々の従業員が時間の節約を実感していても、ボトルネックは別の工程へ移るのです。
生産性指標が見せかけの指標になり得るのは、まさにこのためです。ある作業の所要時間が短くなれば、すぐに成果が出たように見えるかもしれません。しかし、その成果物を後工程で役立つ結果に仕上げるために必要な労力が見落とされる可能性があります。ワークフローの再設計は、まず目指す成果を明確にし、そのうえでAIがどこで価値を生み出すのか、どの手順を変える必要があるのかを判断するところから始めるべきです。
個々の作業の生産性も、ワークフロー全体の生産性も、どちらも重要です。両方を併せて測定するには、個人の時間短縮だけでなく、品質、手戻り、成果に至るまでに必要な人的労力の総量を評価する必要があります。
自らがAI導入の顧客となって学んだこと
Arionkoderでは、AIを前提とする組織への変革を目指し、社内変革プログラムSocratesを立ち上げました。自らを「ケースゼロ」としてAIを試したことで、個々の作業の生産性向上が、ワークフロー全体に潜む問題を覆い隠すことがあると分かりました。たとえばプロジェクト管理のワークフローでは当初、AIで会議の要約、アクション項目、プロジェクトの進捗報告を作成すれば、それらの作業を効率化できると考えていました。しかし、情報量が増えたことで、チーム間の手作業による確認、優先順位付け、調整が依然として必要でした。その結果、負荷は減るのではなく、後工程へと移りました。個々の作業を速くしても、ワークフロー全体が必ずしも効率化するわけではないと気づいたのです。Socratesの目標自体は変わりませんでしたが、プログラムは、個別の作業を加速する段階から、エンドツーエンドのワークフローを再設計する段階へチームを導く必要がありました。
何が起きたのかを検証し、その知見を次の試みに生かしたことで、このつまずきは有益なものになりました。AIによる変革には、テクノロジーを導入するだけでは不十分だということが、改めて明確になりました。実験から学ぶ方法、意思決定の方法、協働のあり方を変える必要があります。Socratesには、従業員が個々に構築したものを、実際の業務の進め方と結びつけられるよう支援することが求められました。
改訂したアプローチでは、実験を明確な段階に沿って進められるようにしています。従業員はまず、現実にある小さな課題を一つ、AIを使って解決するところから始められます。次の段階では、別の人も自分が作ったものを使えるかどうかを試します。そこから会社は、より広いワークフローを検証し、障害となる部分を特定するとともに、他のチームが開発した能力と業務を結びつけることができます。従業員同士が学びを共有することで、改善が、もともと支援するために設計された作業の範囲を超えても有用であり続けるかどうかを評価できます。
この違いは重要です。一人のために機能するものを作ることは出発点です。組織全体に価値をもたらすには、他の人がそれをどう使うか、そして、より大きなプロセスの一部になったときに何が変わるのかを理解する必要があります。
そこで、私たちは目指す成果を出発点として立て直しを始めました。チームが達成すべきことは何か。その成果に寄与する手順はどれで、役目を終えた既存のプロセスがあるために残っている手順はどれか。こうした問いを通じて、個々の作業にAIを加えることから、より明確な目標を軸にワークフローを再設計することへと、焦点を移すことができました。
次に、ワークフローごとに適した基準値と評価基準を設定しました。完了までの時間に加え、品質、手戻り、従業員の労力を確認しました。これらの指標によって、プロセス全体を通じた改善を評価できるようになりました。
Socrates全体で20を超えるワークフローを再設計し、実際のビジネス課題に取り組む実験を、ほかの人も活用できる機能へと発展させました。財務報告の作成にかかる時間は4時間から20分に短縮され、IT部門では反復作業が40%減少し、応答時間も60%短縮したと報告されました。これらの結果は、業務面での前進を示しています。こうした指標がどのようにビジネス価値につながるかを理解するには、ワークフロー全体で労力が減ったか、そしてチームが得られた余力をどのように活用したかを評価する必要があります。
私たちが得た教訓は、改善の効果を最後まで追うことでした。個人の時間削減にも意味はありますが、それが次の担当者の仕事の質を高め、チームを目指す成果に近づけるとき、組織全体の価値につながります。
CIOが測定すべき指標を見直す
改善がビジネスに与える影響を最後まで追うには、AIの利用状況や削減できた時間を記録するだけでは不十分です。リーダーは、AIの導入状況を、仕事の進め方の改善や、それによって得られる成果と結び付ける必要があります。進捗は、次の3つの異なるレベルで測定すべきです。
-
導入状況:従業員はAIを利用しているか
導入状況は、診断指標として引き続き役立ちます。利用状況、実験への参加状況、従業員からのフィードバックを確認すれば、従業員が自信を深めている領域や、支援を必要としている領域が分かります。
こうした兆候は、組織の準備状況を理解するうえで役立ちますが、ROIを証明するものではありません。利用率の高さは調査の出発点であり、変革が実現した証拠ではありません。
-
ワークフローのパフォーマンス:仕事は実際に改善しているか
成功の基準は、ワークフローが本来目指す目的を反映したものでなければなりません。ユースケースによって、改善とは情報の正確性向上、エラーの減少、解決の迅速化などを意味します。
プロセス全体を通じて、基準値と比較してパフォーマンスを評価します。不要な手順の削減、手戻り、品質、従業員の総労力を追跡します。AIが生成した出力を受け取り、それを使って業務を進める人も評価に含めます。別の工程で確認や修正の作業が増えるなら、そのタスクの効率が必ずしも向上したとはいえません。
-
ビジネスへの影響:AIを活用したワークフローは、ビジネス成果を改善しているか
ワークフローの改善を、顧客維持率、売上、サービス品質、解決した案件1件当たりのコストなど、経営陣が重視する成果と結び付けます。たとえば、コンテンツの制作量が増えたことは、アウトプットの増加を示しています。そのビジネス価値は、そのコンテンツがもたらす成果によって決まります。
削減した時間がどのように活用されたかを追跡します。増えた余力は、サービスの向上や成長の支援、運営コストの削減につながったでしょうか。その価値は、人の労力、AIの利用、統合、監督、研修、保守を含む、実現にかかる総コストに照らして評価します。
これらの指標を組み合わせることで、AIの導入から、より優れたワークフローやビジネス成果に至るまでの道筋を追跡できます。AIの利用が増えても、人の労力が減らず、品質も向上せず、ビジネス価値も生まれない場合、リーダーは展開を拡大する前に、その進め方を見直す必要があります。
リーダーはAIの進捗の定義を見直す必要がある
導入状況のデータを見れば、企業は誰がAIを利用しているか、どこでさらなる支援が必要かを把握できます。その価値を理解するには、実際に業務を担う人々の声に耳を傾け、得られた効果がワークフロー全体の改善につながっているかを評価する必要があります。リーダーは、より良い成果につながらず労力だけが増える進め方について、従業員が安心して指摘できるようにし、その声を受けて行動しなければなりません。学びが次の判断をより良いものにするなら、効果のない進め方を変更したり、中止したりすることも前進です。
真の変革は、不要な作業をなくし、より良い成果を実現し、重要な業務に充てられる余力を増やすことに表れます。こうした成果を基準に、リーダーはAIの進捗を判断し、今後の投資を導くべきです。












