インタビュー
アダム・アスクイニ、KPMGの情報管理&データアナリティクスディレクター – インタビューシリーズ

アダム・アスクイニは、エドモントンにあるKPMGの情報管理・データ分析部門のディレクターです。カナダのプレーリー諸州における顧客のデータ・高度分析プロジェクトを率いています。高い成果を上げるチームを育て、顧客に最善の結果を届けると同時に、チームにやりがいのある仕事の環境を提供することに情熱を注いでいます。以前はAltaMLの顧客ソリューション担当副社長、アルバータ州政府のプログラムマネージャー、カナダ軍の通信将校を務めました。一般的ではない経歴でAI分野に入った経験から、部門を横断するチームの多様性と経験を重視し、誰もが成長するAIコミュニティに参加できると考えています。
エドモントンで開かれた2023年の年次AI会議Upper Boundで話を伺いました。主催はAmii(アルバータ機械知能研究所)です。
一般的ではない経歴をお持ちですが、どのようにAI分野に入ったのでしょうか。
カナダ軍の通信将校としてキャリアを始めました。通信将校は人々の通信を支えるIT・通信システムを担当し、無線や衛星通信を多く扱います。データ関連の業務もありましたが、主に基盤技術を担っていたことが、技術分野に入るきっかけでした。大学では化学工学を学びました。もともと好奇心と学びたい気持ちが強く、技術の習得と自己研鑽が重要でした。
軍では14年間、基地や現地でのIT・通信サービスの支援、司令部の設置と前線部隊との通信、森林火災や洪水への国内対応など、さまざまな通信業務に携わりました。その後、アルバータ州政府に移り、省庁横断の技術施策のプログラム管理を担当しました。当時はITの集約が進んでおり、各省庁のサービスの統合や投資管理に取り組みました。その仕事の中で、データや分析を活用する組織を目にするようになりました。
好奇心を刺激され、関連プロジェクトへの参加や独学を始めました。Courseraなどの学習ツールを使い、多くの資料を読み、ツールを提供する企業やプラットフォームも調べました。データと分析への関心が深まり、学びたいという気持ちから、次第にこの分野へ本格的に関わるようになりました。
Coursera以外で、おすすめのポッドキャストや本はありますか。
LinkedInでさまざまな人や組織をフォローしています。例えばEmerjです。運営するダン・ファゲラは示唆に富む見解を発信しています。主要メディアではHBRやForbesも見ています。SAPで働く知人のアンドレアス・ウェルシュはAIとその導入について多くの情報を発信しています。ポッドキャストや本にも触れています。最近読んで良かったのはダグ・レイニーの『Infonomics』です。GartnerやMITに在籍していた著者が、データを収益化するための枠組みを説明しています。できるだけ多くの情報に触れ、実際のプロジェクトにも参加して学ぶようにしています。
軍での経験は、現在の仕事にどのように役立っていますか。
いくつかあります。軍で身に付けた、体系的に計画を立てる方法はとても役立っています。時間管理と優先順位付けもそうです。軍では何が最重要かを判断し、一定のペースで動き、トレードオフを評価して、前に進むための実行可能な方針を選ぶ必要があります。AIのように変化の速い技術分野でも、大量の情報を処理し、何が重要でどこに集中すべきかを体系的に考える力が役立ちます。
もう一つはリーダーシップとチームワークです。大きな組織では、任務に最適な組み合わせを作るため、現場のチームを常に編成し直します。対人関係、リーダーシップ、コミュニケーションは軍の訓練で繰り返し重視される能力で、現在の仕事でも活用しています。
AltaMLで2年以上、顧客ソリューション担当副社長を務めました。どのような会社で、どんなプロジェクトに携わりましたか。
AltaMLは、AIと機械学習の実用化に取り組む企業です。アルバータ州に拠点を置き、本社はエドモントン、カルガリーには大きなオフィスがあり、トロントにも拠点があります。他の企業と協力し、AIを中核とするソフトウェアや製品を開発するB2B企業です。私はサービス部門で、石油・ガス会社や金融機関など幅広い業種を支援しました。AIで解決でき、事業に効果をもたらす課題を定め、データの集約、モデル構築、導入、さらに現場で運用・活用するための変革管理まで支援しました。
入社時はプロジェクトマネージャーとして複数のAI案件を担当し、その後昇進しました。顧客ソリューション担当副社長として、案件の遂行、プロジェクトのリソース管理、継続的な顧客管理を担当し、顧客に直接関わる業務の多くをチームが担いました。
2年半の間に、プロジェクトマネージャー、助言役、品質保証の担当などとして数十のAI案件に関わりました。特に気に入っているのは、アルバータ州側と進めた山火事の予測です。火災リスクが中程度の日に、特定地域で本当に火災が起きそうか判断しにくいという問題がありました。不確実なときは使える資源をすべて手配し、ブルドーザーなどの重機、飛行機、ヘリコプターも追加契約していたため、費用がかかっていました。
翌日の地域別の火災発生確率を予測し、事前の消火準備に向けた人員や機材の最適配置を支えるのが目的でした。状況によっては、火災を見逃すリスクを大きく増やさずに配置を減らしたり、特定時間帯に集中させたりでき、数百万ドル規模の節約が期待できました。取り組みは今も続いており、予測期間を延ばし、対象地域をさらに細分化することも検討されています。アルバータ州の火災シーズンを考えれば、リスクの場所を事前に把握し、必要な場所へ資源を移すことは大きな意味があります。やりがいのある仕事でした。
保険金請求の処理にも携わりました。数千件の請求のうち、自動承認できるもの、人の審査が必要なもの、適切な審査担当チームに振り分けるべきものを判断します。こうした仕事も、組織の手間と費用を大きく削減できます。
現在はKPMGの情報管理・データ分析ディレクターですが、具体的にどのような仕事ですか。
より幅広いデータ・分析の能力を使って、企業が課題を解決する道筋を支援しています。最初のデータ戦略から、異なるシステムに分散したデータの整理・統合、レポート作成と分析、AI・機械学習まで扱います。以前より役割が広がり、学習と自己研鑽への意欲を刺激されています。
通常は顧客の幹部と協力し、何が必要か、プロジェクトはどのようなものか、どう準備すべきかを助言します。新しい高度分析システムに従業員が否定的な印象を持つ場合もあるため、導入と定着にも重点を置きます。必要なプロセスや体制を含め、最適な実装方法を考えます。社内では案件とプロジェクトチームを率い、優先順位を定め、業務を導き、複数チームの足並みをそろえます。
最近のCalgary Heraldのインタビューで、アルバータ州ではAI導入が進んでいると話していました。特にどの業界で見られますか。
多くの業界で見られます。エネルギー分野では、パイプラインの保守や安全点検の最適化にAIを使っています。漏れが疑われる場合、どこを掘るべきかを判断する用途です。掘削は高額ですから。サプライチェーンでも多く使われています。大企業が合併・買収するとデータが分散し、品目マスターから必要な物品を見つけにくいことがあります。新しい言語モデルでデータを整理し、分析できる構造にするわけです。情報の検索や照会が改善したことで、調達契約の集約でも成果が出ています。これはエネルギー以外にも適用できます。
安全面では画像処理や言語モデルを使い、現場に最も関連する安全説明や必要な点検を特定します。金融では銀行顧客の体験を個別化し、経済状況に合う助言や解決策を提供することが重要です。保険では先ほどの請求の仕分けと処理です。林業や天然資源の土地管理では、衛星画像で土地の変化を検出し、土地に関する契約を管理し、あるべきものやあってはならないもの、時間とともに変化したものを画像処理で特定する動きがあります。
組織によって成熟度は異なり、実験を始めた段階も、全面導入が進んだ段階もあります。しかし多くの企業は、取り組まなければ後れを取り、競争で不利になると理解しています。全体に関心は高く、生成AIも関心をさらに高めています。
生成AIは、将来をどのように変えると思いますか。
大きな可能性を感じています。同時に適切な管理が必要です。生産性や効率を大きく改善できる用途は多く、先ほどのサプライチェーンでもChatGPTの公開前から関連技術を使っていました。注目しているのは、技術が主流の業務アプリケーションに組み込まれる傾向です。Microsoft (MSFT )はOfficeアプリに統合するCopilotを発表しました。資料では、メモを書いているときに「この段落を短くして」と頼むと、ワープロが実行してくれる例がありました。
生成AIが主流アプリに直接入ると、企業はいつ、どう導入し、管理し、生成物の品質を監視するかを考えなければなりません。独立した機能なら導入を遅らせたり無視したりしやすいですが、日常の業務基盤に組み込まれることで議論が進みます。
責任ある利用への関心が、企業の適切なプロセスとガバナンスの整備にもつながってほしいと思います。AIを適切に構築し、ライフサイクル全体でリスクを管理し、継続的に確認して出力を信頼できるようにすることです。現在の生成AIへの熱気が、この議論を前進させることを期待しています。
責任あるAIと、AIのバイアスを減らすことが重要な理由を教えてください。
いくつもの理由があります。開発する人々は仕事に誇りを持ち、偏ったシステムを作りたいとは思いません。従業員の意欲と満足を保ち、守るためにも組織内での対応が必要です。法的にも、AIの偏りで訴訟や規制上の問題に直面した事例があります。採用AIの学習データが男性に偏り、女性を差別する結果になった有名な事例があります。
それはAmazonのAIツールでした。
適切な管理がなければ、こうしたことは再び起こり得ます。多くの組織にとって、真剣に取り組むことが不可欠です。評判のリスクもあり、対応を誤れば事業に甚大な影響が及びます。
部門を横断するチームの多様性と経験を重視されています。多様性はなぜ重要なのでしょうか。
AIで解決する課題は、事業や基礎となるデータの面で複雑です。一人や一つの職種だけでは解決できません。異なる視点とスキルを持つチームが、それぞれの強みを生かすことが重要です。また、利用者も多様な人々です。開発チームにその視点がなければ、後で間違いや見落としが起きやすくなります。自分が考えなかったことに他の人が気付くかもしれません。公開後に直すより開発中に対応する方が容易です。
異なる見方は良い対話と質問を生み、最善の方法を考える議論を促します。その人がいなければ検討しなかった点にも目を向けられる。多様な人が問題を見ることで、最良の結果と解決策に近づけると考えています。
AIの次の大きなブレークスルーは何だと思いますか。
生成AIが主流のアプリケーションにさらに組み込まれることです。すでに始まっており、人々が普段使うシステムで利用できることは導入を大きく後押しします。できることと限界、最適な使い方が分かるにつれ、新しい用途も生まれるでしょう。「この問題にも使えるのでは」と発想が広がります。
近い将来、規制政策でも進展を期待しています。立法・規制の動きはありますが、各企業も自ら考えたり助言を受けたりして、今から必要な内部統制を整えてほしい。
法律の整備には時間がかかりますが、企業は内部統制によって多くを変えられます。KPMGが得意とする監査などにも前例があります。どんな管理を行うか、出力をどう検証するか、ハルシネーションをどう減らすか、生成後に何をすれば被害やリスクを抑えられるか。こうした問いを考え、責任あるAIのための体制、プロセス、チームを作ることにつながってほしいと思います。
お話をありがとうございました。詳しく知りたい方はKPMGをご覧ください。












